フィラリアという虫が犬の心臓や血管に寄生することで、
血がうまく体をめぐらなくなってしまう病気です。

蚊が犬の血を吸うときにミクロフィラリア(フィラリアの幼虫)が犬の体内に
入り感染してしまいます。犬の体内に入ったミクロフィラリアは皮膚の下の組織で
2から3ヶ月の間成長し、その後血管に侵入して心臓や肺動脈に達し、
さらに3から4ヶ月で成虫になり、フィラリアの雌は子虫を産みます。
発症した犬は心臓の働きが衰えるほか、肝臓・腎臓も悪くなり、放っておくと
命に関わることもあります。 お腹の虫は虫下しである程度容易に落とせますが、
血管、心臓に入った虫はそう簡単には駆除できません。
フィラリアの成虫は、体長12〜30cm、太さ1〜2mmと細長くソーメンのようです。
フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)は体長300ミクロン、体幅6ミクロンで、顕微鏡で見ないと
見つけられません。

フィラリア症になり血液の循環障害が起こると、以下のようなさまざまなトラブルが現れます。
病気が進行していると、最悪の場合、命に関わることもあります。

疲れやすくなり、運動や散歩をいやがる
興奮したときや早朝などに、乾いた咳をする
肝臓の肥大、おなかに水が溜まる、むくむ
血を吐く(喀血)
おしっこがワインレッドのような色になる(血尿)

札幌においては、6月はじめから、11月はじめの半年間、フィラリア症予防薬を
ひと月に一度確実に飲むことができれば、100%予防できます。
当院では
  (1) フィラリア症だけを予防できる薬
  (2) フィラリア症と回虫を同時に駆除できる薬
これら2つは錠剤です。さらに、
  (3) フィラリア症と回虫を同時に駆除できる薬が
      おやつ(ジャーキー状のもの)に練りこんであるもの。
の3種類を用意しております。

ひと月に1度しか飲まないので、確実に飲ませる必要があるため、
錠剤がうまく飲めない犬や飼い主さんに隠れて錠剤をぺっと吐き出す
可能性のある子には(3)のおやつタイプのものをお勧めします。
逆に、おやつタイプを嫌う犬もいます。その場合は(1)、(2)をお勧めいたします。

もう少し、フィラリア症予防薬について詳しい話をすると・・・
『一度予防薬をのめば、その後の一ヶ月間はずっと、フィラリアに感染しない』とか、
『一ヶ月間、蚊に刺されない』と間違って考えられておられる方が多いのですが、
実際はそうではありません。
 蚊の吸血により犬の体内に入ったフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)は
皮下や脂肪組織でどんどん成長していきます。フィラリア症予防薬が
フィラリアを駆除できるのは感染してからおおよそ15日から50日ぐらいだけです。
もしフィラリア症予防薬でフィラリアが駆除されないと、その後血管に侵入して
非常にやっかいなことになります。
 よってミクロフィラリアを持った蚊に刺さされれば、犬の体内にミクロフィラリアは
侵入しますが、蚊に刺されたからといってあわててフィラリア症予防薬を飲んでも、
その時感染したフィラリアは駆除できません。例えば、8月1日にフィラリア症予防薬を
飲む場合は、6月11日(50日前)から7月15日(15日前)の間に蚊に刺されて
犬の体内に感染したフィラリアを駆除していることになります。
逆に考えると札幌において蚊が最後に見られるのが9月30日だとするとその年は
10月15日(15日後)から11月20日(50日後)の間にフィラリア症予防薬を
飲ませる必要があります。9月にフィラリア症予防薬を飲み終わりにすると、
9月の終わりに感染したフィラリアは駆除されず、秋、冬、春の間に成長し、
皮下、脂肪組織から血管、心臓に移動し、成虫になり子虫を産み続けます。
フィラリア症予防薬の飲み終わりは必ず、11月初めにしてください



フィラリア症